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俺なりのサーキュラーエコノミー2025 第2章
取締役 渡辺 隆志
長すぎた1日
こうして俺は、合計9時間以上を立ちっぱなしかつその半分以上を揺られながら過ごすことになった。
みどりの窓口での1時間10分、新幹線で4時間02分、乗換15分、そして特急で3時間40分。
「座る」という当たり前の行為が、この日はとてつもなく遠いものになった。
初の北海道新幹線に乗り込み、周囲を見渡すと、同じ境遇の“仲間”たちがいた。
なんとヨーロッパ系の外国人が20人近く、この立席で北海道へ向かっている。
俺は祝賀会に向かうためスーツ姿、彼らは旅行者らしいカジュアルウェア。
並んで立つ姿は、まるで異様な光景…
そして、時間が進むにつれて立席での足腰は悲鳴を上げる。
だが、そのうち誰かが突然、狭い空間の中、申し訳なさそうに、そーっと屈伸運動を始めた。
その後、周囲に自然と空間ができ、次々と人が屈伸を始める。
俺もスーツ姿で屈伸。隣では外国人旅行者も屈伸。
——ほんとに妙な光景。でも、不思議と笑いが生まれる。
そこにあったのは、“国籍も立場も超えた謎の結束感”だった。
足腰の痛みと時間の長さは確かに過酷。
けれど、あの屈伸の輪の中で、ほんの少し心が軽くなった。
「立席も悪くないな」
そう思える瞬間があったことを、今も忘れない。
合計9時間以上の立ち席を経て、ようやく16:30に札幌駅に到着。
足は棒、腰はガチガチ。
それでも祝賀会の開始時間に十分に「間に合った!」という安堵感で胸がいっぱいだった。
その後、「新幹線で戻ってきたら?」と軽く言った張本人や、祝賀会参加の若手メンバーと合流。
9時間ぶりに最初に口にしたのは、冷えたビールだった。
「立ち席9時間ですか!?」「マジっすか!?」
大爆笑の渦の中、アルコールが全身にしみわたり、ようやく“人間に戻った”気がした。
そして祝賀会会場に着けば、もう立席の顛末は鉄板ネタ。
「9時間立ちっぱなしで来た男」として紹介され、あちこちから笑いが飛ぶ。
なんだかんだで場も和み、疲れも笑いに変わっていった。
そして定刻18:00、祝賀会がスタート。
シャンパングラスを掲げながら思う。
「……まあ、これも悪くない」と自分に言い聞かせた長すぎた一日が過ぎていったのだった。
第3章へ続く