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回収から再生へ—家庭で学び、会社で挑む私の歩み
オイルリサイクル部 主任 中川 雄介
我が家は、女だらけである。
妻に三人の娘(長女はすでに嫁いだが)、そして愛犬のチョコビ——もちろん彼女もメス。
平日は男性の多い職場で揉まれ、家に帰ると一転、そこは女子会が繰り広げられている“女の園”だ。「パパ、そこ座んないで。チョコビが寝てるじゃん」
……いやいや、そこは俺の定位置なんだけど? 心の声は飲み込み、リモコンの主導権もなく、陰で彼女たちを支える“侍従”のように過ごす。
唯一の仲間だと思っていたチョコビにモフモフしながら、「君だけは俺の味方だよな?」と問いかける。
ところが返ってきたのは、「おい、調子に乗るんじゃないよ」と言わんばかりの威嚇。どうやら俺は“仲間”ではなく、チョコビにとっての舎弟らしい……。
とはいえ、家庭に花が咲き誇り続けるなら、侍従でも舎弟でも構わない。家族の一員として生きる立場は、むしろ誇らしい。
ふと考える。俺の役割はまるで“オスライオン”だ。(名前の雄介にも「オス」が存在するのは後付け…)
オスライオンがナワバリを巡回するように、俺は家の草むしりや雪かきをこなす。
群れに近づく他のオスを追い払うように、娘たちに寄ってくる輩に目を光らせる。
散歩中のチョコビを守るのも同じだ。犬社会の出会いでは「こんにちは〜女の子ですか?」と必ず確認する。そんな自分に苦笑しながらも、結局は家族を守ることが本能なのだと思う。
世間からは「ダメ親父」に見えるかもしれない。
しかし実のところオスライオンも、そして俺も群れ(=家族)のために忙しく立ち働いているのだ。
家庭というハーレムで、唯一のオスとして学び続ける日々。
今日もまた、侍従であり舎弟であり、そしてオスライオンとして——。そんな日常を送りつつ、俺はこの会社に入社して二十有余年が経った。
前職を辞め、当社に転職しドライバーとして廃プラスチックや金属を回収し、やがては廃油を回収する仕事に長く従事してきた。
だがある日、廃油を求めて全道を回る業務の最中に視界がぼやけ始める。
疲れやスマホの見すぎだと思ったが、症状は一向に収まらない。
重い腰をあげ、病院に向かい、そこで告げられた診断は「緑内障」。
それは長年ハンドルを握ってきた俺にとって、事実上の“死刑宣告”だった。
運転ができない=仕事ができない
これは、退職をも意味をすることなのだと・・
と、同時に頭に浮かんだのは家族の顔。双子の娘の大学進学も控え、辞めるわけにはいかなかった。
しかし運転しかしてこなかった自分に、これから何ができるのか。
しばらく、助手席に座り廃棄物回収の助手として業務に関わる日々。
そんな中である日訪れた転機は、まさに自分が関わってきた「廃油」だった。
回収した廃油は処理工程を経て再生重油として燃料に生まれ変わる。
私はその“再生”の現場を任されることになったのだ。
当社の中でも回収から再生までを経験している人材はそう多くない。
一度閉ざされた未来だったが、与えられた次なるチャンスをつかめるかどうかは自分次第。
平均寿命の折り返しを迎え、新しいことに挑戦するのは決して容易ではない。
けれどもこれまで積み重ねた経験と「家族を養うオスライオンとしての使命感」が背中を押してくれる。
家庭では侍従や舎弟として溶け込み、職場では再生の現場で新たな挑戦を歩む。
思いがけない転機も、会社が新しい役割を与えてくれたからこそ掴めたチャンスだ。
これからも「循環型社会の担い手」として、自らの役割を果たし続けたい。
立場がどう変わろうとも、家族のために、仲間のために、そして未来のために。
——今日もまた、唯一のオスとして学びは続いていく。